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「余さずいただく」

めまぐるしく五月は過ぎ、気が付くとずいぶんと日が長くなりました。

冴え冴えと青い朝の空、夕日が映れば胸が締め付けられるほど真赤になる田んぼ。

植えたての苗はまだ仮暮らしのように頼りなく風に吹かれていますが、

まもなく梅雨を迎え、緑を濃くするのでしょう。

ああ、本当に美しい季節です。

そして、今日はとっても美しい日本語を聞く機会がありました。

お食事が済んだお膳を下げにお席まで伺った私に、お客様がかけてくださった言葉です。

「余さずいただきました。とっても美味しかったわ。」

全部食べることを、最近は「完食」と表現することが多い私にとって、

「余さずいただく」は心にふんわりと響く美しい大和言葉でした。

美しい日本語、丁寧な表現。

お料理を作ることも私自身も、表面に見える部分を飾るだけではなく、内面からにじむような美しさを持ちたいと思った出来事でした。


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